計算機

ChatGPT とわたし

ChatGPT の登場には脳天を雷で撃たれたかのような衝撃が走りました。世間の多くの人が ChatGPT に驚いて興奮しているのは知っていますが、私も同じように感動を覚えています。技術的にや社会的に見て ChatGPT の何がすごいのかは、私が述べるまでもないです…

Clean Architecture と上流工程

『Clean Architecture』を読んでいて、これを実現するには上流工程の順番で開発をすればいいのではと思いました。 Clean Architecture とは上の図で説明されるソフトウェアコンポーネントの設計思想です。フレームワーク・データベース・画面などを「細かい…

オブジェクト指向は失敗だった

オブジェクト指向プログラミングは失敗だった――以前から思っていました。 okuranagaimo.blogspot.com オブジェクト指向プログラミング (OOP) が人類にとって早すぎたか、人類には OOP が向いていなかった。世の中の Java で作られたプログラムのほとんどは、…

static メソッドでよいのでは?

static おじさんと呼ばれる人がいたそうだ、あるいはいるそうです。インスタンスの生成を嫌がって、何でも static メソッド にしてしまう人のことです。static メソッドと呼ぶよりも関数と呼んだ方がよいかもしれません。 インスタンスの生成を嫌がるのは、…

結合の種類と結合度

先日に発見したモジュールの結合の定義を自身でも気に入ったので、よく知られている結合の種類をこの定義に当てはめてみようと思います。 Coupling (computer programming) - Wikipedia モジュールの結合にはいくつかの種類がありまして、以下のものが知られ…

モジュールの分割点

アーキテクチャの問題とは、システムをどこで分割 (decomposition) するかという問題と言い換えてよいでしょう。分割するのは、魚を捌くのと同じようなもので、包丁を入れるべき場所というのがあります。 分割するというからには、切り分けるサイズがありま…

メソッドは関数ではないのだが

Clean Architecture を読んでいて、クラスおよびメソッドのことを、関数あるいはサブルーチンの一種としているような記述があって、やや気に障りました。 具体的には、単一責任原則の説明のところでして、 上の絵のように Employee というクラスにいろんな機…

疎結合の正体見たり

モジュールが疎結合になっているとか密結合になっているとか、業界にいますとよく聞きます。モジュール間の結合度の定義を発見したのでメモしておきます。 モジュール の モジュール に対する結合度 は以下の式で定義できます。 ここで、 は が に対して持つ…

シェルスクリプトのキモいところ

シェルスクリプトのインタプリタを作ろうかと、シェルスクリプトの仕様を調べています。気持ちの悪い仕様をいくつか見つけました。仕様書*1を見ながら、dash で試しました。 丸括弧と波括弧のふるまいが違う。 丸括弧はサブシェル、波括弧はコマンドのグルー…

実装に依存するな、仕様に依存しろ

仕様とはわかりくい概念です。辞書には次のようにあります: 製品や注文にあたって、あらかじめ定める仕上がり品の構造やデザイン。 仕様は発注者が定めて、受注者がそれに従うもののようです。仕様書を固めて、そのとおりに製造し、仕様書と照らし合せて完…

設計は名前のことだけ考えろ

ドゥルーズという学者は 哲学とは概念を創造することだ と述べていますが、現代で「概念の創造」という仕事を最も行っている職種は哲学者ではなくてプログラマでしょう。辞書を引くとコンピュータ用語が多く出てきます。それだけ新しい概念が作られたという…

オブジェクトは目的語

オブジェクト指向プログラミング言語ではメソッドを呼び出したいとき、 <インスタンス名>.<メソッド名> とインスタンスを示す変数の名前のあとに、そのオブジェクトに属するメソッドの名前を示します。このプログラミング言語の構文は、誤解も招く良くない構…

ソフトウェアの設計など不要では?

ソフトウェアの設計技法は数多く提唱されてきました。構造化設計から始まり、オブジェクト指向設計、デザインパターン、ドメイン駆動設計、など。私も趣味でこれらについてかなり勉強してきたように思います。問題を綺麗に解くことが好きだからでしょう。 し…

有効数字で浮動小数点数を丸める

浮動小数点数の時系列データを圧縮するのに xor encoding という手法があるそうだ。 Gorilla の論文 http://www.vldb.org/pvldb/vol8/p1816-teller.pdf 時系列データベースに関する基礎知識と時系列データの符号化方式について - クックパッド開発者ブログ …

プログラミングと英語

英語ができなかったら、プログラミングはできるとは言えないのではないか。英語ができなければ近いうちにソフトウェアエンジニアと名乗れなくなるのではないかと思う。私は英語ができない側の人間だから、こんなことを考えるのだと思いますが。 日本社会とし…

Bloom Filter を作ってみた

Bloom Filter を実装してみた。簡単な実装なので、速度や空間効率は悪いです。 Bloom Filter というのは、確率的データ構造の一つで、ある要素が集合に含まれるかどうかを試験するものです。空間効率が非常に良いのが利点で、偽陽性、つまり集合に含まれない…

プログラムのレイヤーは降りれても登れない

プログラムにはレイヤーというものがあります。レベルとも呼びます。プログラムというのは人間の理解を超えて複雑なものなので、全容を知るということは人間には出来ません。理解できない複雑なものを理解するために、人間には便利な思考法が備わっています…

inline_table ― ソースコードに ASCII テーブルを埋め込むための Python モジュール

inline_table という名前のソースコードに ASCII テーブルを埋め込むための Python モジュールを作ってみました。 GitHub - fjkz/inline_table: Python module for embedding text tables into source-code 以下のように reStructuredText で書かれたテーブ…

ソフトウェアの拡張と劣化

デカルトの『方法序説』に面白いことが書いてあった: たくさんの部品を寄せ集めて作り,いろいろな親方の手を渡ってきた作品は,多くの場合,一人だけで苦労して仕上げた作品ほどの完成度が見られない.たとえばよくあることだが,一人の建築家が請け負って…

ttap: ファイルシステム階層によるテスティングフレームワーク

実行可能なテストスクリプト群のディレクトリ構成を定義して、整理するためのフレームワークを作りました。半年ほど前に作ってたやつです。*1塩漬け期間を経たのでリリースとします。 GitHub - fjkz/ttap: ttap: a testing framework with file system hiera…

クラスの依存関係グラフ 4

Java および Scala のクラスの依存関係のグラフについて調べている。 今回はクラスタリング係数を見てみる。 クラスタリング係数とは、あるノードにリンクしたノード群が互いにリンクしている割合を表します。C で表します。ノードごとに値を持ち [0, 1] の…

クラスの依存関係グラフ 3

1回 クラスの依存関係グラフ - 超ウィザード級ハッカーのたのしみ 2回 クラスの依存関係グラフ 2 - 超ウィザード級ハッカーのたのしみ Java および Scala のクラスの依存関係のグラフについて調べている。 驚くべきことに(まあ予想はしていたけれども)…

アニメーションと機械学習

TV 番組で ドワンゴ の人が アニメーション監督の宮崎駿氏に機械学習のデモを見せて「生命への冒涜だ」と怒られたことが話題になりました。 インターネットの記事を見ると、「川上(ドワンゴの代表)め、ざまあみろ」といった意見が目立ちますが、私は宮崎氏…

クラスの依存関係グラフ 2

前回: クラスの依存関係グラフ - 超ウィザード級ハッカーのたのしみ クラスの依存関係のグラフについて調べています。 今回は前回よりも大きな系について調べました。 対象は、Spark 2.0.1 です。前回は、Hadoop 由来のクラスだけ調べたが、今回は Spark の…

クラスの依存関係グラフ

Java のクラスの依存関係を調べてみた。 規模が大きいアプリケーションの方が統計が取りやすいので、Apache Hadoop の 3.0.0-alpha バージョンを対象に調べる。テストとアノテーションを除いた、Hadoop 由良のパッケージに含まれるクラスに依存関係のグラフ…

graph-tool で遊ぶ1

複雑な世界のありようを理解するのに、「グラフ」の可視化だとか分析はすごく有用なのではと考え始めたので、グラフについて勉強してみる。 動くおもちゃがないと楽しくないので、いいのかどうか知らないが、検索して出てきた graph-tool というツールで可視…

権威と OSS

権威とはなんなのだろう?――というのは長いこと悩んでいる疑問である。私が権威が大好きな権威主義者ということなのだろうな。 また、OSS というのも社会学的に興味深い営みであり、これを観察することも趣味である。 さて、どうも最近 OSS が権威主義的にな…

ブロックチェーンについての考察

タイトルが雑だが、最近ブロックチェーンについてぼんやり考えていて、その覚書。 元の bitcoin の Proof of Work (PoW) は以下の式を満たすブロックをブロックチェーンにつなげることができる。 hash(prev, tx, nonce) < 1 / difficulty * hash_max (eq.1) …

bitcoin と ビザンチン将軍問題

bitcoin はビザンチン将軍問題を解決したとしばしば言われます。これが厳密には誤りだそうです。私もそんなに詳しくないのだけれども、確かにそうかなと思います。 ビザンチン将軍問題というのは――離れた場所にいる複数の将軍間で作戦の合意をとりたい;ただ…

bitcoin: Proof of Work の肝

bitcoin の仕組みは「ようできてる」と感嘆します。ポイントはデータベースの更新を承認する「Proof of Work」(PoW) という仕組みです。 さて、bitcoin が PoW で上手く回っているのは、PoW の特徴によるものに思います。PoW がなかったどうなるのかというの…