『独裁者のためのハンドブック』
"The Dictator's Handbook: Why Bad Behavior is Almost Always Good Politics"
Bruce Bueno deMesquita, Alastair Smith
四本健二,浅野宣之 訳
亜紀書房
序章 支配者を支配するルール
第1章 政治の原理 「金」と「仲間」をコントロールせよ
第2章 権力の掌握 破綻・死・混乱というチャンスを逃すな
第3章 権力の維持 味方も敵も利用せよ
第4章 財政 貧しき者から奪い、富める者に与えよ
第5章 公共事業 汚く集めて、きれいに使え
第6章 賄賂と腐敗 見返りをバラ撒いて立場を強化せよ
第7章 海外援助 自国に有利な政策を買い取れ
第8章 反乱抑止 民衆は生かさず殺さずにせよ
第9章 安全保障 軍隊で国内外の敵から身を守れ
第10章 民主化への決断 リーダーは何をなすべきか
目からの鱗の本だった.本書は,私の最も理解しがたい人種:権力者の行動原理を解き明かす.
権力者の至上命題は,権力の座を維持することだ.この視点はなかった.
権力とはなんぞや?権力を志向する人は何に惹かれているのだ?権力って楽しいのか?プーチンとか絶対夜寝れないじゃん.世の中を操れる立場になるのに要するエネルギーに対して,実際に変えられる範囲は割にあわないだろ?ずっと疑問に思っていた.
しかし,勘違いしていた.権力者というのは,権力それ自体に価値を見出しているから権力者なのだ.人道よりも,国民を豊かにすることよりも,権力を維持することに関心があるから,権力を掴み,その立場にあり続けているのだ.権力に関心のない人間は,権力者の座には着けないし,仮に着いたととしてもすぐに失脚するのだ.
そして,権力の原理でもう一つ重要なことは,絶対権力は存在しないということだ.権力者の立場にあることを,支持する人が必ず必要なのである.そして,権力を維持するのに最低限必要な支持者の数で,権力者の行動の性質は決まってくる.必要な支持者が多ければ民主主義国家のリーダーとなり,少なければが独裁者となる.民主主義国家のリーダーは最大多数の最大幸福を追求しなければならない.一方で独裁者は数少ない盟友の利益のみを考えれば良い.その際,多数の国民は犠牲になっても構わない.
レッシグが指摘しているように,民主主義国家でも,必要とされる支持者の数が少なくなっている傾向があるようだ.その結果どうなるかは,本書が示すとおりだ.
FJK'S BOOK NOTEの2013年12月記事より転載