理由なんか考えずに、妖怪のせいとしてしまう考え方もありうる。しかし、「風が吹けば桶屋が儲かる」式に何でも原因と結果、いわゆる因果律(物語といっていいかもしれない)があるというパラダイムが支配的だ。
この「風が吹けば桶屋が儲かる」式に世界を切り取るならば、注意しなければならないことがある。
「桶屋が儲かる」の部分について
5W1HでいうところのWHYとHOWが原因としたら、のこりのWHO, WHEN, WHERE, WHATを結果として明らかにせねばならない。特にWHOとWHAT。なんで?とか訊く人で、実際何がどうなってることに対してそれを言っているのか分かっていない人をすごくよく見る。*1
そして、「桶屋が儲かる」という何がどうなったかというのは事実であらねばならない。事実でないことにたいして原因を求めても意味はない。
逆に、原因が分からないから、つまり妖怪のせいであったとしても、事実が事実でなくなるわけではない。
「風が吹けば」の部分について
これが桶屋が儲かった原因になっていないことは明らかだ。
この場合、桶屋が儲かったのは需要が増えたからだ。桶屋というシステムに対して、外部から入力があって、システムに変化が生じる。この外部からの入力がいわゆる原因である。WHOに直接アクセスできないものを原因としてはいけない。景気がいいから売上が伸びたなども同様に間違いだ。景気が商品を買うわけではない。
また、原因というのは結果と同値でなければならない。結果の必要十分条件でなければならない。
なぜ山に登るか。山があったから。
必要条件を1つ説明しているだけで、必要十分条件をMECEに説明しているわけではない。一般に原因はひとつではない。*2
風が吹けば〜の場合、桶屋が儲かる桶の需要が増えたのは、ねずみが増えて桶のそこをかじったからであるが、実はねずみが増えた理由は説明されるが、ねずみが桶のそこをかじる理由は説明されない。こういうごまかしがたくさん入っているから、風が吹くという前提から、桶屋が儲かるという間違った結論が出てくる。
間違った仮定を入れればどんな結論だって導くことはできる。だから、真面目に原因を考えると全ての必要条件を挙げる必要があって大変だ。*3