パッケージングと付加価値

安く買って高く売るは、商売の基本です。世の中には仲介業者というのが大勢いて、(ちゃんと調べたことはないですが)労働者のかなりの割合が仲介業をしていると思われます。

しかし、今や21世紀であって、これだけ IT 化が進んできますと、ただ右から左にものを流すだけの商売というのは難しくなってきているでしょう。インターネットが全世界をほぼリアルタイムで、ほとんど無料で接続してます。仲介業者によって従来行われていた業務は、ネットワークの上だけで、以前よりも上手く達成されるようになりました。インターネット黎明期に創業して今や大企業になっている会社は、そういう事業をしている会社が多いです。

彼らは世の中をますます効率化してどんどん事業を伸ばしていくべきだと思いますが、仲介業者が彼らに駆逐されないためには、ただ橋渡しをするだけでなくて、もっと付加価値を生めるようになるべきでしょう。単に効率的になるだけでは、社会は発展しないし、つまらないですから。

付加価値を生むとは、つまり、ひと手間を加えるということです。今も言われているのかは知らないですが、日本国は加工貿易といって、原材料を輸入し、加工して別の形に変えたものを輸出していました。工業は大規模すぎて今さら参入できないですが、ちょっとひと手間加えて見栄えを変えるだけで、付加価値というのは生まれます。付加価値のない商売は、とことん値切られた上で、誰も買わなくなると思いますが、ひと手間が入っている商売は生き残るし、今後求められるのはそのひと手間だと思います。

ひと手間の加えようは無数にあるわけですが、現在最も有望だと私が考えているのは、パッケージングです。これはどういうことかといいますと、商品を組み合わせたり、組み替えたりして、使いやすい形態にすることです。

例えば、

  • 漫画全巻ドットコム。マンガの単行本は、なぜかバラ売りされていますが、全て揃って一つの作品なので、まとめて売るというだけで消費者が使いやすい形態になります。

  • リサイクルショップ。どこで買ったか忘れてしまいましたが、引っ越したときに洗濯機と冷蔵庫と電子レンジのセットを買いました。急いでいたので、悩まずに買うことができて、大変便利でした。

  • FOLIO。これは新興の証券会社でして、テーマに対して投資ができるという新しい形態の金融商品を提供しています。株は 100 株か 1000 株の単位でしか基本は売買できないので、多くの会社には投資できないものです。しかも、会社というものはやたらと数があるけれども、普通の人は個々の会社なんて興味がないので、選べません。FOLIO は、株を1株ずつにバラした上で、テーマという形で複数の会社をまとめることで、消費者にとって魅力的な形態に株を組み替えてしまいました。私はここの商品には惚れ込んでいまして、この会社がどう化けるのか興味津津です。

これらはただ既存のものを組み合わせるだけなので、誰でも思いつきそうなのですが、思いつかないものです。そして、簡単に真似できそうだけれども意外と真似ができないものです。真似しようとしたらビジネスモデルを作り替えなければならないので、新規にはじめるよりコストがかかってしまいます。また、パッケージングの過程は外から見えないので、そこは真似できないからです。

ものなんて溢れかえっていて、供給過剰な昨今です。ネットで調べれば、大抵のものが安く手に入ります。しかし、消費者には多すぎて、探せないし選べない。単品の商品で差別化するのは今や無理です。違いなんてほとんどなくて、実用上はどれでも同じなんだから。また、消費者は、手に入るものを全てを管理し消費しきることが、もうできなくなってしまっています。なので、売り手としては、パッケージングを上手くして、消費者が買いやすくすることが、今後の仲介業のあるべき姿ではないでしょうか。