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二重思考

小説

非常に便利な言葉を覚えた.ジョージ・オーウェル『1984』に出てくる「二重思考」(doublethink)という言葉だ.

二重思考とは,ふたつの相矛盾する信念を心に同時に抱き,その両方を受け入れる能力をいう.

もう少し具体的にいうと,

故意に嘘を吐きながら,しかしその嘘を心から信じていること,都合が悪くなったと事実は全て忘れること,その後で,それが再び必要となった場合には,必要な間だけ,忘却の中から呼び戻すこと,客観的現実の存在を否定すること,そしてその間ずっと,自分の否定した現実を考慮にいれておくこと

である.

オールドスピークでは,これはかなりあからさまに,「現実コントロール」と呼ばれている.

社会をうまいこと生きている人の思考ではないか.世の中は整合的にできているわけでないから,こういう思考は必要になってくる.

整合的でない社会にいて,二重思考をしているにも関わらず,論理とか根拠とかを求める思考が二重思考だ.

イメージとしてはこういう概念があったのだが,対応する言葉をこれまで持ち合わせていなかった.言葉によって概念に輪郭が与えられた.

二重思考が必要なこの社会というのは,やはりディストピアだった.

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

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