企業としてOSSを開発することにどういった利点があるのだろうかということについて
- ソフトウェア規格の奪い合い
- OSSは最大多数の最大幸福を実現する
- OSSを作る側の幸福
の順に書いている。今回は2回目である。
OSSは最大多数の最大幸福を実現する
ソフトウェア製品を標準規格にするためにはどうすればよいだろうか。ソフトウェア製品を標準規格にしたければ、OSSであることは必要条件だ。
MicrosoftでWindowsのマーケティングを行っていたトム佐藤は『マイクロソフト戦記』でデファクトスタンダードを作り出す第一の条件として以下を挙げている。
テクノロジーをベースに「最大多数の最大幸福」の論理で、そのテクノロジーをディベロッパーに使ってもらえるように分け隔てなく、オープンにしなくてはならない。大勢が参加してデファクトとなることで、多数が利益を得られるような仕組みが不可欠である。胴元だけが儲かるようなシステムには、ディベロッパー達は集まることはない。
つまり、そのソフトウェア製品に依存するソフトウェアを作る人に利点がなければならない。参加者が増えることで、プラットフォームの所有者だけでなく、参加者にも利益がなければならない。
この「最大多数の最大幸福」を実現する現状最良の手段がOSSだ。
パソコンの黎明期では、API仕様がオープンであればよかったかもしれない。しかし、現在ならばコミュニティベースのOSSの方が参加者の幸福度は優れている。
コミュニティベースのOSSはソースコードと開発体制がオープンであり、誰でもソースコードを閲覧でき、修正を投稿できる。これは使う人を幸せにする。無償で使える。ソースコードが開示されていて監視の目が多いから、品質も高い。機能追加を投稿してもよいので、機能も多い。人が集まれば、それだけ品質と機能は向上する。
OSSを利用することには大きなメリットがあるから、OSSにはディベロッパーが集まる。ディベロッパーが集まれば、そのOSSは標準規格となる。
OSSでなければディベロッパーは集まらない。今からOSSでないソフトウェアを作ったとして、それで標準化を狙うのは難しいだろう。
規格の特徴として、規格が広がり始めたら一気にデファクトスタンダードになるということがある。皆が同じ規格を使っている方が便利だからだ。OSSは無償で使用できるということもあり、使いはじめる障害が小さい。規格の広がりやすさからもOSSは有利である。
また、誰もが勝ち馬に乗りたいと考えている。前回、ソフトウェアの依存先の決定というのは経営戦略の上で重大事項であると書いた。OSSがこれほどポピュラーになっている現在の状況では、生き残るのはOSSと考えるのが自然だ。美人投票の原理からもOSSがデファクトスタンダードになる。
したがって、ビル・ゲイツのようにソフトウェアを標準化しようと思うならば、OSSとすることが必須だ。
しかしながら、OSSは無償で配布されていて、製品の販売で直接利益を得ることはできない。それでも企業がOSSを開発することには利点があるのだろうか。次回はそれについて書きたい。
- 作者: トム佐藤
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