OSSとは標準規格である(3)――OSSを作る側の幸福

企業としてOSSを開発することにどういった利点があるのだろうかということについて

  1. ソフトウェア規格の奪い合い
  2. OSSは最大多数の最大幸福を実現する
  3. OSSを作る側の幸福

の順に書いている。今回は3回目である。

OSSを作る側の幸福

OSSは利用者を幸せするからデファクトスタンダードになりうるとしても、作る人は幸せになるのだろうか。みんなの幸せが自分の幸せだという篤志家だけではなく、企業にも利点あるのだろうか。

企業がOSSを作ってそれを標準規格とすることは、金儲けのためにも重要な戦略だ。

企業がOSSを開発することによって利益になるのは以下の3つの場合があると考えている:

  • OSSを自らが利用する;
  • OSSのサポートを生業とする;
  • OSSを自分の商品の撒き餌にする。

特に最後が、OSSを作ってそれをデファクトスタンダードにする意義が強いので詳しく述べたい。

OSSを自分の商品の撒き餌にするとは、OSSと一緒に自分の商品を使わせることで、自分の商品を売ろうというものだ。

例えば、サーバー用OSで高いシェアを持つ「Linux」は、RedHatに次いで、Intelが開発に最も貢献している。これはLinuxが普及すれば、Linuxを動作させるのに必要なIntelx86アーキテクチャのCPUが売れるからである。

他の例として、ログ収集ためのソフト「fluentd」はTreasure Dataにより開発されている。これもfluentdがログ収集の標準規格になれば、fluentdと親和性の高い自社のサービスの優位性が高まることを狙ったものだろう。

このようにOSSを無償でばら撒くことで自分の商品に誘導している例が見られる。OSSを拡販資材にしているといってもよい。

歴史は繰り返している。

かつてOracleは自社のDBのSQLに独自に加えていた文法を、ANSI規格にねじ込むことで他社のDBを規格不準拠とした。規格を上手に利用した戦略だった。

現在はソフトウェア自体が規格だ。OSSデファクトスタンダードとすることで、OSSと親和性が高い自社製品の価値を高めることができる。

もっと古いところだと、メインフレームの時代はハードウェアが偉くて、ソフトウェアはおまけだった。それがダウンサイジング化・オープン化していくと、OracleMicrosoftといったISV(独立系ソフトウェアベンダー)が出てきてソフトウェアに価値があるということになった。近年OSSが台頭してきて、ソフトウェアは再び無償の撒き餌になってきている。

無償の撒き餌といっても卑下されるようなものではなく、自社製品の優位性を決定づける非常に戦略的な武器なのだ。


私は、OSSに対抗するための製品とかを作るのではなくて、規格としてのOSSを作ったり、OSSで優位性を高めることができるサービスをしたいんだよね。

OS戦線 異変あり

OS戦線 異変あり