なぜRedHatだけ成功しているのか?

以前、サポートはOSSを商売にするには一般的な方法だと書きました。

しかし、OSSのサポートをするというビジネスモデルで大成功している企業はRedHatぐらいではないでしょうか。RedHat以外にもOSSのサポートで儲けようとしている企業はありますが、RedHatほどは上手くいっていないように見えます。

これはなぜかと考えたら、私はOSというソフトウェアの立ち位置が特殊だからではないかと考えています。

ソフトウェアは単品では動きません。必ず別のソフトウェアに依存しています。世の中にあるソフトウェアの依存関係を有向グラフで表したら、ある種のソフトウェアが矢印の先に必ず現れます。OSです。OSは、ほとんど全てのソフトウェアに依存されています。

他のソフトウェアに依存されるソフトウェアというのは一種の規格です。規格の特徴はみんなが同じものを使った方が便利だということです。だからRHELが使われます。

RHELでできることは原理的にはSUSE LinuxでもCentOSでもUbuntuでもDebianでもできます。しかし、ソフトウェアパッケージを売る側からしたらこれらは同じではありません。動作保証はディストリビューション・バージョンごとに行わなければならないのです。

ソフトウェアベンダーはどのディストリビューションで自社のソフトウェアを動作保証するかを選ばなければなりません。その場合、RHELを選ぶことは必須です。RHELで動くことが保証されていないLinux用のソフトなんてLinuxユーザーの大部分を占めるRHELユーザーから見たら価値がないです。

逆にユーザーがDebianを使いたくても、必要なソフトウェアがRHELしか動作保証していなかったら、RHELを使わざるを得なくなります。

自然法則として一つのOSに人が集まっていくのです。どこに集まるかは時の運でしょうけど、どこかに集まるのは宇宙の法則として決まっています。こういう現象を量子力学とのアナロジーで「ボーズ・アインシュタイン凝縮」と言うらしいです。

RedHatが売っているのは、RHELにソフトウェアを依存させておけば間違いないですよという安心なのです。サポートはそのための手段でしかありません。

逆にユーザーが集まってしまったら、バージョンアップでユーザーを振り回すことだってできてしまいます。バージョンアップで古いバージョンを計画的に陳腐化させて、新しいバージョンで金を巻き上げるということが可能です。

こういうことができるソフトウェアの種類はOSぐらいです。同様のことを他の種類のソフトウェアでできないかと考えましたがOSほどの支配力はありません。だから、RedHatだけしか大きく成功していないと思っています。

ただ、OS単体ではだんだん利益になりずらくなっていそうなので、別のところにチャンスがあるかもしれません。RedHatもそれは分かっているようで「OpenStack」等OS以外にも手を出していますね。次に金になりそうなソフトウェアはなんだろうか?

OS戦線 異変あり

OS戦線 異変あり